烏骨鶏自然孵化【1回目】
抱卵開始からの記録になります、長いです
登場する鶏紹介
雄の「福」
雌の「アンディ」
雌の「姫」
まず卵を産み始めてちょうど3週間(21日)経った4月18日の夜、いつもは奥に雄の福、手前の単管パイプに雌が留まって寝ているのにこの日は雌が奥に居座っていた
時期が時期だけに抱卵の可能性が頭をよぎる
翌朝、4月19日、姫が抱卵を始める
この日を【抱卵1日目】とする
次の日、姫が離れた隙に貯めていた卵5個を追加で置く
卵はマジックで印を付けておく、沢山産みすぎた時は印が付いていないのをいただく為、現時点では8個の卵
【抱卵3日目】今度はアンディが抱いていた、しかも8個全部
抱卵6日目、2羽で抱いている
この日あたりから場所を交代しながら各々抱卵する
【抱卵8日目】畑作業をしているとクアー!!と凄まじい雄叫びが聞こえたので見るとアンディが福に追い掛け回されている
福に突かれながらも必死で逃げるアンディ、1分ほど追い掛け回した後、小屋の入り口付近で「コアー」「クアー」と会話をする2羽、やがて福の隣に落ち着いて、糞をした
どうやら福は卵から離れたアンディを「離れるな!」と叱っていたようだ、アンディは「ちょっとくらいいじゃない!」と逃げ回っていたと
よく見ると「溜め糞」をしていた、これがトイレすら控える抱卵中の雌がする「溜め糞」か、、デカいな
ちなみに卵が増えていた、印が付いていないのが4つ、印付きが4つ、つまりアンディは8個抱いていることになり、姫は印付きを4つは抱いているので計12個は卵がある計算だ
さて、
【抱卵22日目】
人工孵化で、温め始めてから21日で孵化が始まり(ヒビが入り始めて)22日目に雛とご対面と学んだので
この日は仕事しながらドキドキわくわく、
昼に妻から一報が入った
「雛が死んでる」
ああ、ああ、必死に平常心で仕事終わらせて小屋に入ろうと扉を開けると確かに雛が死んでいる、しかも3羽
なぜ
どうやら福、アンディ、姫の3羽の鶏が殺したようだ
とにかく、なぜ
原因が分からないことには対処ができない、もっというなら真因が知りたい、どのように殺したかだけでなく何を思って雛を殺したか
何のために雛を殺したのか
しばらく見ないうちに雌の顔は疲れて険しくなっていた
状況を整理する。
・雌2羽で10数個抱卵中(現在進行形)
・3羽孵化して2羽死亡、1羽は雌の近くで瀕死
・瀕死の雛を雌が弱い力で突いている(ちょっと食べてる)
・オスの嘴にはほとんど血は付いてない
ツイッターで回答を求めたが、求め方が悪かったのか原因究明に繋がる回答は得られなかった
養鶏をしているネットの知り合いにも聞いてみた所、以下の情報が得られた
・若い雌が突き殺すことがある
・孵卵器で孵った鶏は育児が上手くいかないことがある
・オスは警備体制
・5歳のベテランになるとあちこちの雛の面倒を見る
・弱い個体を突く習性が鶏にはある
・初めての抱卵で孵化した雛が親鳥から離れて寒くて鳴いているのを、親鳥が物珍しいものを見るように時々つついていた、ということがあった。あまりにひどく突くので腹の下に入れると突かなかった→目に入らなければ突かない?
・子供を理解していない?
・黒より白い烏骨鶏の方が神経質で突くタイプが多い?
・初めての子育ての若い雌は雛を死なせることが多い
・若い雌は育児放棄することがある
・雛を守ろうと、雄や他の雌を追っ払うときに雛を踏み潰してしまうこともある
・生まれたてのヨロヨロした雛は突かれやすいので、雛がしゃんとするまで親鳥のお腹の下からはみ出して親の目につかないように囲む方が良い
・若い親は自分から少しでも離れた雛を異物と判定する気がする
ありがたい!!
本当にありがたい!!
情報を総括すると
①若い雌は雛を我が子としても雛としても認識できない
②巣箱の役割は雛を親から離れさせない事と親鳥にヨロヨロの雛を見せない事
巣箱は急に用意できないし、場所的にかぶせる事もできないので太い薪で囲いを作ってはみ出しにくくする
雛が3羽死んだ日を【孵化1日目】とする
翌日の【孵化2日目】
この日から日中ずっと定点撮影を行うことにしました、不測の事態の原因究明と烏骨鶏の生態調査の為です
雄の福は入り口を陣取って警備してます
雛の生存を確認できました
この日は新たな死骸は無し
【孵化3日目】
朝、姫が雛を1羽連れて移動していた!怖い!
興味深いシーンがビデオに沢山映っていた
・抱卵場所から離れるメスを雄が叱って押し戻していた
・親鳥と雛が卵の殻を食べていた
・はしゃいで囲いを乗り越えて親鳥から離れてしまう雛の頭を雄が強めにゴツン、途端に大人しくなる雛、追撃せず見つめる雄
追記、交尾した
【孵化4日目】
仕事から帰ってくると水場で2羽おぼれ死んでいた
水場を一時的に撤去した
【孵化5日目】
今日は仕事が休みなので早朝から水場の修理・改善作業
①冬の凍結で割れてしまった分岐弁を新品と交換
②①の為出なくなった水を出るように
③水場の桶に石を入れて浅くする
④桶が低いので場所変更、基礎から見直し
水場を作りながら野生の鶏は川の水をそのまま飲むのではなく、川のふちの石場に溜まった水や水溜りの水を飲んでいるのでは?と思い、そんなイメージで作った
青米撒いたら親が突くから雛も突いてたまに食べてた
最長で4日齢なわけだけど、外気温20度でも常時温めるのではないようで外で元気に遊んでいた、30分とか平気
おそらく体を動かすことで雛は知らず知らずに体温を高く保っているのだろう
動きが鈍い個体がいるかと思ったら自力で体温を上げているだけで15分とか経つと元気に動き出した
【孵化6日目】
朝、小屋に行くと今朝生まれたであろう雛が冷たくなって死にかけていたので保護した
ツクネが餌だと思って突こうとするのでカップで一時的に防御、ケースを段ボールで仕切って温める
体温が上がると動けるようになったが足が悪いので上手く歩けない、生まれた時からこうなのか親鳥や他の雛に圧迫されて足がおかしくなったのか
どうやらこれが原因で見放されたようだ
温まったところで小屋に連れて行くと私が持つ雛を見た瞬間に大人の3羽が雛を突こうとする、私から奪おうとするのではなく明確に雛を攻撃する
大人3羽の視線を誘導して見てない隙に他の雛と一緒にする、必死で親鳥のもとに這って行こうとするが上手くいかない
やがて置いてけぼりになり体温が落ちて動けなくなる
→温めて動けるようにする
→小屋に戻す
これを繰り返すが歩けないと話にならないと気付く
ツクネの世代で使った強制ギブスを使う
【孵化7日目】
保護した子は昨日生まれた、雛は卵黄の栄養が残っているので丸3日は飲まず食わずで生きていける
明日中に歩けるようになれば親鳥の元に戻すことができるはず
朝8時、リハビリ開始
強制ギブスをセットして15時間が経過した、右足の真ん中の指が曲がっている、右足に力が入らないようだ
リハビリで立てるようになり、歩くのはまだまだだけど親鳥の元に連れて行けば昨日見せたガッツで歩き出すのでは?と連れていくが動かない
相変わらず親鳥は突こうとするので見てない隙に紛れ込ませるがダメだし、鳴かない、なんなら突かれても鳴かない
ご近所さんと山椒を取りに出かける為回収
数時間なので小屋は開けたままにする
カラスが遠くで見ているが親鳥がいるので大丈夫だろう、何かあれば小屋に逃げ込むし、雛も親鳥に付いて小屋に入るだろう
もしかしたら何羽かやられるかもしれないけど、その間に逃げるだろう
もしもの時、犯人を特定する為にビデオは回しておこう
帰ってきて小屋を見に行くと羽が散乱している
慌てて小屋に行くと大人の3羽はいる
雛が見当たらない
やっちまった
頭が熱くなる
とにかくビデオを回収してデータをパソコンに移す
移している間に保護した雛を大人たちの元へ連れていく
もしかしたら残った雛だと思って大事にしてくれるかも
現実は甘くなかった、気が立っているのか今までに無いほど雛に対して攻撃的だった
あんまり突こうとするので手の甲で遮るが止まらない、突かれた甲から血が出る、雌も寄ってたかって雛を攻撃する
なぜだ
イラっと来て福を手で払いのける
突こうとする姫の頭を叩く、払いのける
怒鳴る
すると福が私に向かって威嚇、蹴りを入れてくる
乱暴に払いのける
このままじゃ駄目だと思い雛を回収する、右目が潰れていた
ビデオを確認すると犯人はカラスだった
そこに映っていたのは大人の3羽が全身全霊、命懸けでカラスの撃退に挑んでいる姿だった
カラスは私が畑を離れた40分後に襲来、10分で雛6羽を連れ去っていた
自分が恥ずかしかった
「なぜ雛を守れないんだ」と頭ごなしにカッとなってしまった自分が
「所詮、鳥」「所詮、鶏」「所詮、弱肉強食の弱」と高をくくっていた自分が恥ずかしい
生まれて9か月の鶏たちは雛を守る為、未知の襲撃者に全力で立ち向かっていた
雛と真正面から向き合っていなかったのは私の方だった
カラスは賢く、強かった
今回の出来事で学んだのは
・カラスは人がいるとき来ない
・親鳥たちは非常時小屋に避難するが生後間もない雛は親に付いていくことすらできない
・カラス1羽に烏骨鶏3羽は勝てない
・成鳥は狙わない
これを踏まえて対策は
「危険を感じた時に小屋に戻る事」が出来るようになるまで人がいない時は雛を外に出さない
すぐに小屋に行って鶏たちに謝った
福は私をじっと見ていた
【孵化8日目】
翌日、福から攻撃されることはなかった
変わった点は小屋から鶏が離れない事
カラスはいないのに入り口から2mまでが活動範囲で、スコップで土を掘り返して誘導しても4mが最大だった
夕方になるとかなり小屋から離れて活動できるようになったが、小屋付近にいる時間が圧倒的に増えた
保護した子は保温器の近くでうずくまって鳴かない、生きているが気力を感じない
【孵化9日目】
朝、保護した雛が死んでいた
【まとめ】
以上が人生初の自然孵化でした
残念な結果でしたが学べる事が沢山ありました
全てを糧にして生きます
・若い親鳥は雛を雛としても我が子としても認識できない
・巣箱の役割は雛を親鳥から離さない事と雛を親鳥に見せない事
・生後間もない雛は親に付いて行けても非常時は動けない
・烏骨鶏3羽でもカラス1羽に勝てない
・親鳥が見捨てた雛にはそれなりの理由がある
・雄は雌に「雛から離れない事」を、雛には「母鳥から離れない事」を初めに教える
・雛は母鳥の真似をして育ち、卵の殻を食べる
・突く場所で意味が違う気がする
頭→叱る、注意する、励ます
背中→褒める
首→(雄が母鳥に)怒って強めに叱る
優しく、目→求愛行動?どうしたの?
強く、目→雛を殺すため
・雛は動き回ることで体温を保つので、狭いケージ内では100%ケージ内を外気温以上に保つ必要がある
・生まれてすぐに歩けて鳴けて母鳥から離れない雛だけが残る
・生後4日の雛は自力で保温することも出来る
・生後4日の雛は青米を食べられる
・仮説「若い雌は雛を雛として認識できないのではなく、雛が卵から出てきたと認識できない」、これなら托卵が成立するのも頷ける、つまり鶏は卵から出てきたモノを我が子として育てようとする、その上で歩けて鳴けて自分から離れないのを残すのでは?
・水場が深いと溺れ死ぬ、親鳥は助けられない
・雛が生まれて間もない頃、母鳥はずっと「クックック」と低い声で鳴き続ける、そして雛と行動するようになり「クックック」と母鳥が鳴くと雛が寄ってきたり注目したりする、母鳥が鳴きながらする行動を雛が真似する
・烏骨鶏の育雛は完成度が高い、完全に任せても安心どころか人よりよっぽど上手い
・近親相姦を避けるために人工孵化を試みているが小屋の鶏との合流が大変なので、托卵した方がよっぽど楽
・15個抱卵して13個有精卵
12個は完全に孵化して6体が生き残った
初めの3羽が突きで死亡
2羽が水没死
1羽は足が悪く保護したが4日目に死亡
・とんでもなく臭い匂いがしたと思ったら抱卵場所の横で卵が割れてて、緑色の中身が飛び出していた
・外気温13度の曇りでも雛は元気に活動する
・15個抱卵で残り3個になったら育雛に入って温めなくなったので、取って置いた卵を足すのは最後の方にした方が最後の最後まで温めるし一気に雛が孵る?